ここでは、お子様が発症おたふく風邪(流行性耳下腺炎)について詳しく見ていきましょう。
おたふく風邪(流行性耳下腺炎)の初期症状は?
おたふく風邪(流行性耳下腺炎)は、ムンプスウイルスと呼ばれるウイルスによって引き起こされる感染症で、特に1歳〜小学校低学年の子供がかかりやすい病気の一つです。日本では通称「おたふく」とも呼ばれ、名前の通り、顔が腫れたような外見になるのが特徴です。
初期症状の特徴
おたふく風邪の初期症状は比較的ゆっくりと始まります。感染してから症状が出るまでの潜伏期間は約16〜18日(2〜3週間程度)とされており、感染してすぐに発症するわけではありません。
最初に見られる症状としては以下のようなものがあります。
- 発熱(38℃前後)
突然の発熱で始まるケースが多く、熱は1〜2日程度持続することが多いです。 - 食欲不振
風邪のような症状に伴い、子供が食べ物を嫌がるようになります。 - 全身のだるさ・倦怠感
元気がなくなり、日中もぐったりしているような様子が見られます。 - 耳の下や頬の腫れ(耳下腺の腫れ)
この症状がもっとも特徴的です。片側、もしくは両側の耳の下あたりが腫れ、痛みを伴います。腫れは次第に広がり、顔全体がふくらんだように見えることもあります。 - 嚥下時の痛み(飲み込みにくさ)
唾液腺が腫れているため、食べたり飲んだりする際に痛みが走ることがあり、特に酸味のある食べ物で強く反応します。
類似疾患との見分け方
おたふく風邪は、他の病気と見分けがつきにくいこともあります。たとえば「リンパ節の腫れ」や「膿瘍(のうよう)」なども耳の下が腫れる原因となることがありますが、これらの場合は腫れが一方向であったり、強い発赤や膿を伴うことが多いです。
また、風邪症状だけで耳の下が腫れていない場合は、通常のお風邪である可能性が高いです。発熱後に特有の耳下腺の腫れが出てきた場合は、おたふく風邪を強く疑います。
子供の行動で気づくポイント
おたふく風邪は、子供自身が「耳の下が痛い」と訴えることがありますが、小さい子供の場合、自分の痛みをうまく説明できないことも多いです。そのため、次のような様子があれば注意が必要です。
- 頬をさすっている、触られるのを嫌がる
- 飲食の際に嫌がる、食べる量が急に減った
- 口が開けにくい、顎を動かすことを嫌がる
- 微熱が長引き、顔の一部が腫れてきた
これらの症状がそろって見られる場合は、医療機関での診断を受けることが大切です。
おたふく風邪(流行性耳下腺炎)になったらどれくらいで治る?
おたふく風邪は、感染力が比較的強く、小さな子供の間で流行しやすい病気のひとつですが、多くの場合は自然に回復するウイルス性疾患です。この章では、発症から治癒までの大まかな流れや期間、個人差、経過中に気をつけるべきことなどを詳しく解説していきます。
発症から治癒までの一般的な期間
おたふく風邪の一般的な治癒期間は、およそ 7〜10日間程度 とされています。
- 発熱:1〜3日間
- 耳下腺の腫れ:3〜7日間程度(最長10日ほど)
- 全身症状(倦怠感や食欲不振など):およそ1週間
発症して2〜3日後には腫れがピークに達し、そこから徐々に引いていきます。腫れが完全におさまり、子どもの元気が戻ってくるまで、通常は1週間から10日程度の経過が必要です。
治るまでに影響する要因
おたふく風邪の回復期間には個人差があります。以下のような要因が回復スピードに影響します。
- 年齢
年齢が低いほど症状が軽く、早く治る傾向があります。逆に学童期や思春期にかかると、症状が重くなりやすく、治癒までに時間がかかることも。 - 免疫力の状態
普段から風邪をひきやすい、体力が落ちている、慢性疾患があるなどの場合は、回復にやや時間がかかることがあります。 - ワクチンの接種状況
おたふく風邪ワクチンを1回でも接種している場合、症状が軽く済み、回復も早いケースが多いです。 - 合併症の有無
おたふく風邪にはまれに合併症(無菌性髄膜炎、睾丸炎、卵巣炎、膵炎など)が伴うことがあります。こうした合併症があると治癒までの期間が長くなることがあります。
再発や長引くケースはある?
基本的に、おたふく風邪は一度かかると免疫がつき、再発することはまれです。ただし、ごく一部の人では再感染の報告例もあり、特にワクチン未接種であったり、免疫が十分でない場合には注意が必要です。
また、次のような場合には症状が長引くことがあります。
長引く症状がある場合や、腫れが2週間以上残るようなケースでは、小児科での再診が推奨されます。
完全に治ったと判断する基準
以下のような状態がそろえば、回復したとみなされます
- 熱が下がり、平熱が続いている
- 顔の腫れ(耳下腺・顎下腺)が完全に引いている
- 食事や会話での痛みがなくなっている
- 元気が戻り、普段通りに遊んだり生活できている
幼稚園や保育園への登園再開を判断する上でも、これらの回復サインが重要です。後の章で登園基準について詳しく解説しますが、登園には「腫れが完全に引いた後」という条件があるため、慎重に観察することが大切です。
おたふく風邪(流行性耳下腺炎)になった場合の処置方法は?
おたふく風邪(流行性耳下腺炎)はウイルス性疾患であり、原因となるのはムンプスウイルスです。ウイルス性の病気であるため、根本的にウイルスを直接退治する特効薬は存在せず、治療の基本は「対症療法」となります。すなわち、現れた症状に応じて、体の負担を和らげ、自然な回復を促す方法がとられます。以下に、おたふく風邪にかかった子供に対する具体的な処置方法を詳しく解説します。
発熱・痛みの緩和
おたふく風邪では、38℃を超える高熱が数日間続くことがあり、同時に耳下腺や顎下腺の腫れに伴う痛みが強く出ます。このような場合には、小児科医の指導のもと、アセトアミノフェンなどの解熱鎮痛剤を使用することがあります。痛みや不快感が軽減されることで、食事や水分摂取がしやすくなり、回復も早まります。
ただし、アスピリンはライ症候群(重篤な脳症)との関連が指摘されており、15歳未満の子供への使用は避けなければなりません。市販薬を使用する際にも、必ず医師または薬剤師に相談しましょう。
安静と十分な睡眠
おたふく風邪のウイルスに感染すると、身体は全力でウイルスと戦おうとするため、非常にエネルギーを消費します。そのため、発熱やだるさが強い期間には、しっかりと安静にし、十分な睡眠をとることが最も大切です。
また、体力が落ちているときには無理に活動をさせると症状が悪化することもあるため、園や学校への登園・登校は控え、自宅で静かに過ごしましょう。
食事と水分補給
耳下腺の腫れや痛みのため、食べ物を噛んだり飲み込んだりすることが困難になることがあります。その場合は、以下のような工夫をすることで、無理なく栄養や水分を摂取できます。
- 刺激の少ない柔らかい食事:おかゆ、うどん、豆腐、スープ、プリン、ゼリーなど
- 酸味や塩味の強いものは避ける:みかんやレモン、梅干し、カレーなどは腫れた部分を刺激する
- 冷たいものをうまく利用:アイスクリームや冷たいスープは痛みを和らげながら摂取しやすい
水分補給も忘れずに行い、脱水症状を予防しましょう。発熱時は汗を多くかくため、こまめな水分摂取が不可欠です。水、お茶、経口補水液(OS-1など)を活用すると良いでしょう。
感染拡大を防ぐための配慮
おたふく風邪は飛沫感染や接触感染によって他人にうつります。特に発症から5日程度はウイルスの排出量が多く、感染力が高いため、他の子供たちとの接触は避けるようにしましょう。家庭内での感染拡大を防ぐためには以下のような対策が効果的です。
医師の指導を受けながら経過観察
おたふく風邪自体は自然に治る病気ですが、まれに合併症を引き起こすことがあります。以下のような異常が見られた場合には、すぐに医師に相談する必要があります。
- 症状が数日以上続いて改善が見られない
- 腫れが片側のみ、または左右で著しく差がある
- 強い頭痛や嘔吐がある(髄膜炎の可能性)
- 耳が聞こえにくい(ムンプス難聴の可能性)
- 腹痛・睾丸の腫れ(精巣炎・卵巣炎の可能性)
とくに、ムンプス難聴や髄膜炎などは後遺症が残る可能性もあるため、医師の経過観察のもと、慎重に対応していくことが求められます。
おたふく風邪(流行性耳下腺炎)になったらどの病院に受診すればいい?
おたふく風邪(流行性耳下腺炎)は、子どもによくみられるウイルス性の感染症であり、感染者の大多数は軽症で自然に回復します。しかし、初期症状が似ている他の病気との鑑別が必要であったり、合併症のリスクがあるため、専門的な診断を受けることが重要です。本章では、どのような病院に受診すればよいか、そして受診時のポイントについて詳しく解説します。
最初に相談すべきは「小児科」
子どもが「耳の下あたりが腫れている」「熱がある」「食べにくそうにしている」といった症状を訴えた場合、まず受診すべきは かかりつけの小児科 です。小児科医は、成長過程にある子どもの身体の特性や発達段階を熟知しており、症状の進行具合や合併症の可能性を考慮した上で、適切な処置や今後の経過観察を指導してくれます。
また、家庭内で他の兄弟姉妹がいる場合、二次感染の防止策についても具体的なアドバイスを受けられるでしょう。
耳鼻咽喉科との連携も視野に
おたふく風邪では、耳下腺・顎下腺など唾液腺が腫れるのが代表的な症状ですが、耳に関連する臓器に炎症が及ぶこともあります。特に以下のような症状が見られる場合は、耳鼻咽喉科での専門的な診察が勧められます。
- 聴力が低下している(ムンプス難聴の可能性)
- 頭痛や耳の奥の強い痛みを訴える
- 唾液の分泌異常がある
耳鼻科医は、耳や鼻、のど、唾液腺といった部位に関する診断と治療のスペシャリストであり、必要に応じて超音波検査やCT検査などを実施して詳しい病状を把握します。
高熱が続く、頭痛・嘔吐がある場合は救急外来へ
おたふく風邪の中には、まれに重篤な合併症が起こることがあります。以下のような症状が見られた場合には、総合病院の小児救急外来や小児科のある大きな病院を受診するようにしてください。
- 3日以上の高熱が続く
- 激しい頭痛、嘔吐、意識がもうろうとする(髄膜炎の兆候)
- 性器の腫れや痛み(精巣炎・卵巣炎)
- 持続する耳鳴りや難聴(ムンプス難聴)
合併症は早期発見・早期治療が鍵を握ります。自己判断せず、症状が悪化する兆しが見られた場合は、迷わず医療機関を受診しましょう。
受診の際の注意点
おたふく風邪は他人に感染するリスクがあるため、事前に医療機関へ電話連絡をすることが大切です。院内での感染拡大を防ぐため、隔離室での診察や指定時間帯での来院を案内されることがあります。
また、受診時には以下の情報を整理しておくと、診断がスムーズに進みます。
- 発熱や腫れが始まった日時
- 食欲や元気の有無
- 他の家族や園での感染者の有無
- 過去のワクチン接種歴(ムンプスワクチンの有無)
地域の休日・夜間診療所の利用も検討
夜間や休日に症状が現れた場合は、地域の小児救急センターや夜間診療所を活用することも検討しましょう。市区町村のホームページなどで、最寄りの対応医療機関や連絡先を事前に確認しておくと安心です。
また、電話相談窓口「#8000(子ども医療電話相談)」では、夜間や休日でも看護師や医師が対応し、必要な受診先をアドバイスしてくれます。
おたふく風邪(流行性耳下腺炎)になったら幼稚園・保育園は通わせられる?
おたふく風邪(流行性耳下腺炎)は、飛沫感染や接触感染によって広がる感染力の強いウイルス性疾患です。そのため、感染拡大を防ぐためにも、発症した子どもは登園・登校を控える必要があります。この章では、どのタイミングで登園可能になるのか、保護者としてどのような対応が求められるのかについて詳しく解説します。
学校保健安全法による登園停止期間の定め
日本では「学校保健安全法施行規則」において、感染症の登園・登校停止期間が定められています。おたふく風邪(ムンプス)は、この中で「第2種感染症」に分類されており、登園再開には一定の条件が必要です。
「耳下腺、顎下腺、または舌下腺の腫脹が出現した後、5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで」 は出席停止とされています。
つまり、症状が出てから少なくとも5日間は自宅療養が必要であり、さらに熱や腫れが引いて子どもの体調が安定していることが登園再開の条件となります。
園に提出する書類について
登園を再開する際には、多くの園で医師の意見書や登園許可証の提出が求められます。これにより、園側は感染拡大のリスクを適切に管理することができます。
書類の名称やフォーマットは園によって異なることがありますが、一般的には以下のような記載項目があります。
- 診断された日
- 登園可能と判断された日
- 全身状態が良好であること
- 腫脹が軽快していること
提出が必要かどうか、いつ受診すべきかについては、あらかじめ園に確認しておくと安心です。
感染予防のために家庭でできること
登園再開の目安を過ぎても、ウイルスの排出が完全に止まっているとは限りません。登園後もしばらくは、以下のような感染予防策を心がけることが大切です。
- マスクの着用(可能であれば)
- こまめな手洗いとうがいの習慣
- タオルや食器などの共用を避ける
- 咳エチケットの指導
特に兄弟姉妹がいる家庭では、家庭内感染のリスクも高まるため、日常的な衛生管理を徹底しましょう。
合併症後の配慮が必要なケース
おたふく風邪によって「ムンプス難聴」や「精巣炎」「卵巣炎」「髄膜炎」などの合併症を発症した場合、回復までに時間がかかることがあります。その際には、登園を急がず、医師の指導のもとで無理のないタイミングを見極めることが重要です。
合併症の影響がある場合は、医師から生活面での注意点や登園に関する指導があるため、それに従って行動しましょう。
登園後の園内対応
園に復帰した後も、担任の先生や保育士に対して、次のような点を伝えておくと安心です。
園と家庭が連携して子どもの健康を見守ることで、安心して集団生活に戻ることができます。
まとめ
おたふく風邪(流行性耳下腺炎)は、子どもがかかりやすい代表的なウイルス性感染症の一つであり、特に未就学児から小学校低学年にかけて多く見られます。その特徴は、耳の下(耳下腺)が腫れて痛みを伴い、発熱などの全身症状を伴う点にあります。以下に、これまでの内容を改めて整理しておきます。
初期症状の特徴
おたふく風邪の初期症状には、
- 発熱(38℃前後が多い)
- 耳の下の腫れと痛み(片側または両側)
- 食欲不振や全身のだるさ
- 頭痛や倦怠感
などが見られます。特に耳下腺の腫れがはっきりしてくると診断がつきやすくなりますが、発症初期は風邪と見分けがつきにくいことも多いため、慎重な観察が求められます。
治癒までの期間と経過
一般的には、発症から5〜7日ほどで腫れや熱が治まり、1週間から10日ほどで回復します。ただし、合併症の有無や個人差によって治癒期間が延びる場合もあります。
自宅での処置と注意点
おたふく風邪に対して有効な特効薬は存在しないため、
- 解熱剤や痛み止めなどの対症療法
- 安静な生活と十分な水分補給
- 食べやすい柔らかい食事の工夫
が基本的な対応となります。合併症(髄膜炎や難聴、精巣炎・卵巣炎など)にも注意を払い、異変があれば早めに医療機関を受診することが重要です。
受診先と登園の再開基準
小児科の受診が基本となりますが、症状が急変した場合や耳の痛みが強い場合には耳鼻科との連携も有効です。
登園・登校については、「発症から5日が経過し、かつ全身状態が良好であること」が基準とされています。園や学校により登園許可証の提出が必要な場合もあるため、事前の確認をしておくとスムーズです。
感染予防とワクチンの重要性
おたふく風邪は感染力が強く、兄弟姉妹や園内での集団感染も珍しくありません。感染予防には、
- 正しい手洗いの習慣
- マスクや咳エチケット
- タオルの共用を避ける
などの日常的な衛生対策が有効です。また、おたふく風邪ワクチン(ムンプスワクチン)を接種することで、発症のリスクを大きく減らすことができます。日本では定期接種には含まれていませんが、任意接種として多くの小児科で実施されており、特に保育園や幼稚園など集団生活を送る前の接種が推奨されています。
最後に
おたふく風邪は比較的軽症で済むことが多い一方で、まれに重篤な合併症を引き起こす可能性もある油断できない病気です。子どもの体調の変化にいち早く気づき、適切な処置や受診を行うことが、安心して家庭生活・園生活を送る上での鍵となります。
保護者としては、「焦らず、しっかり見守る」姿勢がとても大切です。本記事が、おたふく風邪に対する理解を深め、万一の際の冷静な対応につながれば幸いです。