水ぼうそう(水痘)について

 ここでは、お子様が発症しやすい水ぼうそう(水痘)について詳しく見ていきましょう。



水ぼうそう(水痘)の初期症状は?

水ぼうそう(水痘)は、水痘・帯状疱疹ウイルス(Varicella Zoster Virus, VZV)によって引き起こされるウイルス性の感染症で、主に子供がかかりやすい病気です。感染力が非常に強く、主に飛沫感染や接触感染によって広がります。一般的には軽症で済むことが多いですが、まれに重症化することもあるため、早期発見と適切な対応が重要です。

初期症状の特徴

水ぼうそうの初期症状は、以下のようなものが見られます。

  1. 発熱
    発症初期には37.5℃〜38.5℃程度の微熱から中等度の発熱が現れることが一般的です。高熱になることは少ないものの、個人差があります。
  2. 全身の倦怠感・ぐったり感
    発熱とともに、だるそうにする、食欲が落ちる、元気がなくなるといった全身症状もみられます。
  3. 発疹の出現(最も特徴的)
    水ぼうそうのもっとも特徴的な症状が、水疱性の発疹です。最初は赤い発疹(紅斑)として現れ、次第に小さな水ぶくれ(水疱)になり、数日でかさぶたになります。
    この発疹は頭皮や顔から始まり、体、腕、足へと全身に広がるのが一般的です。かゆみを伴うことが多く、子供がひっかいてしまい、二次感染につながる場合もあります。
  4. 発疹の経過と混在
    水ぼうそうでは、紅斑、水疱、かさぶたが同時に存在するという特徴的な発疹の状態が見られます。これは他の発疹性疾患との鑑別において重要なポイントです。

初期症状のまとめ

  • 発熱(微熱〜中等度)
  • 倦怠感・食欲不振
  • 顔や体から始まるかゆみのある発疹(水疱)
  • 紅斑・水疱・かさぶたが混在

水ぼうそうは、発疹が出てから診断されることがほとんどですが、上記のような発熱+全身状態の変化+皮膚の異常が見られたら、早めに医療機関を受診することが大切です。



水ぼうそう(水痘)になったらどれくらいで治る?

水ぼうそう(水痘)は、一般的には比較的短期間で自然に回復する感染症ですが、発症から完治までの経過には個人差があり、年齢や体力、免疫力、合併症の有無などによっても異なります。この章では、水ぼうそうの治癒までの流れや期間について、医療的な知見をもとにわかりやすく解説します。

発症から回復までの一般的な経過

水ぼうそうは、主に「潜伏期間」「発症初期(前駆症状)」「発疹出現期」「かさぶた形成期」という経過をたどります。以下、それぞれの段階ごとに詳しく見ていきましょう。

潜伏期間(感染から発症まで)

水ぼうそうは、ウイルスに感染してから実際に症状が現れるまでに10日〜21日程度の潜伏期間があります。多くの場合、約2週間(14日前後)で発症に至ります。この間、子ども自身は元気に過ごしていることが多く、症状がないため感染に気づくことはほとんどありません。

しかし、潜伏期間の終盤、すなわち発症直前の1〜2日間にはすでに他人に感染させる可能性があり、集団生活の場では注意が必要です。

発症初期(前駆症状)

潜伏期間を経た後、発症初期には以下のような前駆症状が現れることがあります。

  • 微熱(37〜38℃程度)
  • 軽い頭痛や倦怠感
  • 食欲不振
  • 軽い咳や鼻水

これらは風邪に似た症状で、水ぼうそう特有の症状ではないため、初期段階では水ぼうそうとは気づきにくいことがあります。しかし、この前駆症状の1日〜2日後に、特徴的な発疹が出現し始めることで、水ぼうそうであることが明らかになります。

発疹出現期〜かさぶた形成期

水ぼうそうの最大の特徴は、水ぶくれを伴う発疹です。この発疹は次のような段階を経て進行します。

  • 赤い発疹(紅斑)が体幹部や顔などに出現
  • 数時間〜1日以内に水ぶくれ(小水疱)へ変化
  • 水ぶくれが破れたり濁って膿疱状になる
  • 最終的にかさぶた(痂皮)になって乾燥し、脱落

この発疹は、発症から2〜4日間にわたり次々と出現するのが特徴です。そのため、古い発疹と新しい発疹が混在した状態が数日間続きます。

個人差はありますが、発疹が完全にかさぶたになって乾くまでに通常7〜10日程度かかります。すべての発疹がかさぶたになった時点で、感染力はほぼなくなり、回復期とされます。

全体の治癒期間の目安

以上の流れを踏まえると、水ぼうそうの発症から完治までにかかる期間はおよそ10日〜14日間が一般的です。以下にまとめると、

  • 発疹出現からかさぶた形成まで:5〜7日
  • すべての発疹がかさぶたになるまで:7〜10日
  • 全身状態が元に戻るまで:10〜14日

発熱や倦怠感などの全身症状は、発疹が出た初日から2〜3日続くことが多く、症状が落ち着けば徐々に普段の生活に戻ることができます。



水ぼうそう(水痘)になった場合の処置方法は?

水ぼうそう(水痘)はウイルス性の感染症であり、原因は「水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)」です。このウイルスに対しては抗菌薬が無効なため、基本的には対症療法が中心となります。つまり、症状そのものを和らげ、重症化を防ぐ処置が大切です。

基本的な処置の考え方

水ぼうそうの症状は、主に「発熱」と「皮膚の発疹(水疱)」です。発疹はかゆみを伴い、掻き壊すと傷ができたり、跡が残ったりすることもあるため、適切なスキンケアが非常に重要です。また、全身状態をよく観察しながら、熱の管理や水分補給をしっかり行うこともポイントです。

ここからは、具体的な処置内容について以下の観点から詳しく見ていきましょう。

発熱への対応

水ぼうそうの発症時、特に初期には38〜39℃の発熱を伴うことが多く見られます。子どもの発熱は体力を奪いやすいため、以下のような対応が有効です。

  • こまめな水分補給
    発熱により体内の水分が失われやすくなります。脱水症状を防ぐためにも、こまめに水分(麦茶、経口補水液など)を与えましょう。
  • 部屋の温度調整
    室温は20~23℃、湿度は50~60%を保ち、子どもが快適に過ごせる環境を整えましょう。
  • 解熱剤の使用
    解熱剤は使用しても構いませんが、インフルエンザや水痘ウイルスに対しては、「アスピリン系(アセチルサリチル酸)」や「イブプロフェン」の使用は避けた方がよいとされています。必ず医師の指示に従って処方された解熱剤(例:アセトアミノフェン)を使用しましょう。

発疹・水疱へのケア

水ぼうそうの特徴的な症状である発疹(水疱)は、発熱から1日以内に現れ、最初は赤い丘疹、次に水疱、最後にかさぶたへと変化していきます。

  • かゆみ対策
    かゆみが強いときは、医師にかゆみ止め(抗ヒスタミン薬)を処方してもらうとよいでしょう。市販の薬は自己判断で使用せず、小児科の指示を仰ぎましょう。
  • かきむしり防止
    爪は短く切り、清潔に保ちましょう。また、就寝中のひっかき防止のために、ミトンや手袋を着用させることも有効です。
  • 薬の塗布
    かさぶたになる前の水疱には、ウイルスの拡散を抑える「アシクロビル軟膏」などの抗ウイルス薬が処方されることがあります。ただし、これも医師の診断のもとで使用しましょう。

抗ウイルス薬の内服

水ぼうそうに対する内服薬として、「アシクロビル(ゾビラックス)」という抗ウイルス薬が処方されることがあります。これは重症化予防を目的とするもので、特に以下のようなケースでは使用が推奨されることがあります。

  • 免疫力が低下している子ども(喘息持ち、アトピー性皮膚炎、先天性疾患など)
  • 発症から24時間以内で、症状が急激に悪化しそうな場合
  • 集団生活をしていて、感染拡大のリスクがある場合

アシクロビルは水疱が出てから24時間以内に服用を開始することで効果を発揮しやすいため、早めの受診が重要です。

入浴の注意点

発疹が出ている状態でも、基本的に入浴は問題ありません。ただし、以下の点に注意しましょう。

  • 湯船に浸かるのではなく、シャワーのみで済ませる(特にかさぶたになるまでは)
  • ぬるめの温度(37℃前後)で短時間にする
  • 強くこすらず、泡でやさしく洗う
  • 入浴後は清潔なタオルでポンポンと拭き取るようにし、保湿をしっかり行う

食事の工夫

発熱やかゆみ、全身倦怠感などで食欲が落ちがちな水ぼうそうですが、回復を早めるためにも栄養補給は大切です。

  • 消化のよいもの(おかゆ、うどん、蒸しパンなど)
  • のどごしがよく、刺激の少ないもの(ゼリー、プリン、バナナなど)
  • 高カロリー・高たんぱくのメニューを小分けにして出す

無理に食べさせず、「食べられるものを少しずつ」で構いません。水分補給だけは必ず意識しましょう。



水ぼうそう(水痘)になったらどの病院に受診すればいい?

水ぼうそう(水痘)は比較的よく見られるウイルス感染症であり、特に乳幼児や未就学児の間で流行することが多い病気です。初期段階では風邪に似た症状が現れ、次第に小さな赤い発疹が水疱へと変わっていきます。そのため、病気を早期に見極め、適切な医療機関で受診することが大切です。

かかりつけの小児科を最優先に

水ぼうそうが疑われる症状が出た場合、まずは かかりつけの小児科 に連絡を取るのが基本です。普段から子供の体調を把握してくれている医師であれば、迅速かつ的確な判断が可能です。

ただし、感染力が非常に強い病気であるため、来院前に必ず電話を入れ、発疹や発熱がある旨を伝えてください。多くの小児科では感染症が疑われる患者には別室での診察や時間をずらしての対応など、他の患者への感染を防ぐ措置をとっています。

小児科が休診の場合の選択肢

かかりつけの小児科が休診日だったり、時間外であったりする場合、次のような選択肢があります。

  • 地域の休日夜間急病センター
    夜間や休日に対応している医療機関です。水ぼうそうの症状を伝えた上で、受診可能かどうか確認してから訪れるようにしましょう。
  • 小児救急電話相談(#8000)
    全国共通の電話相談サービスで、看護師や医師が状況に応じたアドバイスを提供してくれます。受診の必要性や緊急性を判断する際に役立ちます。
  • 地域の感染症指定医療機関
    症状が重篤であったり、免疫力が低い兄弟姉妹や家族がいるなど、特別な事情がある場合には、感染症に詳しい病院を紹介されることもあります。

皮膚科や耳鼻科ではダメなの?

水ぼうそうの症状である発疹は皮膚に出るため、「皮膚科に行ったほうがよいのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし、水ぼうそうは全身性のウイルス感染症であるため、基本的には 小児科での診察 が最も適しています。

また、耳の後ろや喉の奥に湿疹や腫れがある場合でも、まずは小児科の医師が総合的に判断を下し、必要に応じて皮膚科や耳鼻科へ紹介してくれるという流れになります。

受診時の注意点

水ぼうそうは空気感染するほど感染力が強いため、受診時には以下の点に注意しましょう。

  • 来院前に必ず電話連絡を入れる
  • 兄弟や付き添いの家族は必要最小限に
  • マスクを着用し、手指の消毒を徹底する
  • 病院に着いたらすぐに受付に「水ぼうそうかもしれない」と伝える

これらの点を守ることで、他の患者や医療スタッフへの感染リスクを減らすことができます。



水ぼうそう(水痘)になったら幼稚園・保育園は通わせられる?

水ぼうそう(水痘)は感染力の非常に強いウイルス性感染症であり、特に子どもたちが集まる環境では一気に感染が拡大する恐れがあります。そのため、保護者の方が最も気になることのひとつが「登園の可否」ではないでしょうか。この章では、水ぼうそうにかかった子どもがいつから登園できるのか、またその際に注意すべきポイントについて詳しく解説していきます。

登園停止期間の目安とは?

水ぼうそうは「学校保健安全法」により、「第二種感染症」として扱われています。この法律では、患者が他者に感染させる可能性が高い期間は学校(または保育施設)への登園・登校を禁止することが定められています。

具体的には、以下のように明記されています。

「すべての発疹が痂皮(かさぶた)化するまで登園・登校は不可」

これは、発疹がまだ水ぶくれの状態にあるときにはウイルスを排出しており、周囲への感染のリスクが非常に高いためです。かさぶたになることでウイルスの排出が止まり、感染力が大幅に低下すると考えられています。

どれくらいの期間で登園可能になる?

水ぼうそうの経過は個人差はあるものの、一般的には以下のような流れになります。

  • 発症初日:微熱や倦怠感などの前駆症状がみられる
  • 発症2日目~3日目:水ぶくれ状の発疹が全身に広がる
  • 発症4日目~6日目:発疹が次第にかさぶた化していく
  • 発症7日目~10日目:すべての発疹がかさぶたになり、感染力がほぼ消失

したがって、登園可能となるのは発症から7日~10日前後が一般的です。ただし、お子さんの体調や症状の重さによってはそれ以上かかる場合もあります。

登園再開時に必要な書類や対応は?

多くの保育園や幼稚園では、登園再開にあたって「登園許可証明書」や「登園届」などの書類の提出が求められます。これは保護者の自己判断で登園を再開させるのではなく、医師の診断をもとに登園の可否を決めるためのものです。

保育園や幼稚園によっては、以下のいずれかの書類を指定しているケースがあります。

  • 医師が記入した登園許可証明書
  • 保護者が記入する登園届(医師の診断結果に基づいて)

園によって異なるため、事前に通っている園に確認しておくことが重要です。

登園再開後の注意点

登園を再開した後も、以下の点に注意しておくと安心です。

  • まだかさぶたが完全に取れていない場合、衣服などで患部を清潔に保つ
  • 体力がまだ回復していない場合は、無理に外遊びなどをさせない
  • 他の子どもとの接触が多い遊びは、症状の回復具合を見ながら徐々に再開する

また、免疫力が一時的に低下している可能性もあるため、風邪やインフルエンザなど、他の感染症にも注意が必要です。



まとめ

水ぼうそう(水痘)は、子どもがかかりやすい感染症のひとつであり、一度発症すれば一生免疫がつくとされる病気です。しかしその一方で、感染力が非常に強く、集団生活を送る保育園や幼稚園、小学校などで一気に広がる恐れがあるため、発症時には正しい知識と適切な対応が求められます。

本記事では以下のような観点から、水ぼうそうについて詳しく解説してきました。

初期症状について

水ぼうそうは、発熱や倦怠感などの風邪に似た前兆の後に、かゆみを伴う発疹が全身に広がるという特徴的な症状があります。顔や頭皮、体幹部から始まり、最終的には手足や口の中、さらには目の周囲まで広がることもあります。

治癒までの期間

発症から約1週間~10日程度で全ての発疹がかさぶたになるのが一般的で、この時点で感染力はほぼ消失します。ただし、かゆみによる掻き壊しや二次感染、体調の回復に時間がかかることもあるため、焦らずに安静を保つことが大切です。

処置方法

水ぼうそうには特効薬は存在しませんが、抗ウイルス薬(アシクロビルなど)が処方される場合があります。また、かゆみを抑えるための抗ヒスタミン薬や外用薬が処方されることもあります。家庭でのケアとしては、清潔を保つこと、爪を短くして掻き壊しを防ぐこと、十分な水分補給などが基本となります。

受診先について

水ぼうそうが疑われる場合は、まずは小児科または皮膚科を受診しましょう。発疹が見られた時点でウイルスの排出が始まっているため、受診の際は事前に医療機関に連絡し、感染対策に配慮した診察を受けるようにしてください。

登園の可否

学校保健安全法により、「すべての発疹が痂皮(かさぶた)化するまで」は登園・登校が禁止されています。登園再開時には、医師の診断に基づいた「登園届」や「登園許可証明書」の提出が必要となることが多いため、園の指示に従って手続きを進めましょう。

保護者としてできること

子どもが水ぼうそうにかかると、仕事や日常生活にも影響が出るかもしれません。しかし、適切な処置と安静な環境を整えることで、比較的軽度で済むことが多い病気でもあります。焦らず、子どもの様子をしっかり観察しながら、必要に応じて医師に相談してください。

また、水痘ワクチンの接種によって発症リスクや重症化を抑えることも可能です。予防接種を受けることで、家庭内や保育園などでの感染拡大も防げますので、スケジュールを確認し早めに対応しておくと安心です。


子どもがかかりやすい感染症について正しい知識を持っておくことは、家庭だけでなく地域や社会全体を守ることにもつながります。万が一のときも慌てずに対応できるよう、本記事の内容を参考にしていただければ幸いです。