ここでは、お子様が発症しやすい溶連菌感染症について詳しく見ていきましょう。
溶連菌感染症の初期症状は?
溶連菌感染症とは?
溶連菌感染症は、「A群溶血性レンサ球菌」という細菌によって引き起こされる感染症です。主に喉に感染するため、「溶連菌性咽頭炎」として知られていますが、時には皮膚、耳、さらには血液中にまで広がることもあります。特に小児(1歳〜10歳前後)に多く見られ、保育園や幼稚園、小学校など集団生活をしている子供たちの間で流行しやすい感染症です。
この病気の特徴は、ウイルス性の風邪とは異なり、原因が「細菌」であるという点にあります。そのため、治療には抗生物質が効果的とされており、適切な処置を受ければ早期に回復が見込めます。しかし、治療が遅れると合併症(リウマチ熱や腎炎など)を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。
初期症状の見分け方
溶連菌感染症の初期症状は、風邪と非常によく似ているため、初期の段階では見分けがつきにくいことがあります。ただし、以下のような特徴的な症状が見られる場合は、溶連菌感染症の可能性が高まります。
急な高熱
溶連菌感染症は、突然38℃以上の高熱を出すことが多く、熱は持続的で、解熱剤を使っても一時的にしか下がらないことがあります。熱が1日〜2日続いた後、他の症状がはっきり現れてくる傾向があります。
咽頭痛(のどの痛み)
喉が赤く腫れ、強い痛みを伴います。特に食事をとるときや唾を飲み込むときに痛みを訴えることが多く、食欲が落ちる子供も少なくありません。また、喉の奥に白い膿のようなもの(白苔)がついている場合もあり、風邪とは異なる兆候として重要です。
発疹(猩紅熱)
一部の子供には、発熱から1〜2日後に赤い細かい発疹が体中に現れることがあります。これを「猩紅熱(しょうこうねつ)」と呼び、溶連菌感染症の一症状として知られています。皮膚がザラザラとした質感になるのが特徴で、特に首、胸、脇の下、太ももなどに多く見られます。
舌の変化(いちご舌)
猩紅熱を伴う場合、舌が赤く腫れぼったくなり、いちごのような見た目になる「いちご舌(strawberry tongue)」が出現することがあります。この症状は、診断の手がかりになることもあります。
頭痛・倦怠感
全身のだるさや頭痛を訴えることもあります。高熱と合わせてこれらの症状が出ると、子供は非常に機嫌が悪くなることが多いです。
嘔吐・腹痛
喉の痛みや高熱に加えて、嘔吐や腹痛を訴えるケースもあります。特に小さな子供は、言葉で症状を伝えるのが難しいため、腹痛を訴えた際には注意深く様子を観察する必要があります。
溶連菌感染症になったらどれくらいで治る?
一般的な治癒期間の目安
溶連菌感染症は、原因菌であるA群溶血性連鎖球菌(Group A Streptococcus)が咽頭や扁桃に感染することによって発症する細菌性疾患です。風邪のような症状で始まることが多いため、初期の段階ではウイルス感染と区別がつきにくい場合があります。しかし、適切な治療を受ければ、比較的早期に改善する病気でもあります。
子供が溶連菌に感染した場合、治療の開始が早ければ早いほど回復も早く、抗生物質の内服を開始してから 24〜48時間以内に熱が下がり、のどの痛みも緩和されることが多い です。一般的には、抗生物質を適切に服用し続けた場合、症状は3日から5日でほぼ解消 します。
ただし、治癒したように見えても、 処方された抗生物質(主にペニシリン系、あるいはセフェム系)を10日間きちんと飲み切ることが大切 です。途中で服用をやめてしまうと、菌が完全に消滅せず、再発や合併症のリスクが高まるため注意が必要です。
治癒後に注意すべきこと
症状が治まった後も、以下のような点に注意しましょう。
感染後の免疫と再感染の可能性
一度溶連菌に感染したとしても、 免疫が完全にできるわけではありません。実際、子供は同じA群溶連菌でも異なる血清型に繰り返し感染する可能性があります。特に免疫力が未熟な小児期では、再感染が比較的多く見られます。
そのため、以前にかかったことがあるからといって油断せず、喉の痛みや発熱がある場合は再度受診し、必要であれば検査(咽頭ぬぐい液の迅速検査など)を受けることが重要です。
溶連菌感染症になった場合の処置方法は?
医師の診断を受けることが最優先
溶連菌感染症の疑いがある場合、まず最優先すべきは小児科などの医療機関を受診することです。のどの赤みや痛み、発熱、発疹などがあるときは、他のウイルス感染症と区別がつきにくいため、自己判断は避けましょう。医師は問診や視診、必要に応じて迅速検査(のどのぬぐい液を使った抗原検査)を行い、溶連菌感染症かどうかを確定診断します。
抗生物質(ペニシリン系など)の処方
溶連菌感染症は細菌感染症のため、治療の中心となるのは抗生物質の服用です。最も一般的に処方されるのはペニシリン系の抗生物質(アモキシシリンなど)で、アレルギーがある場合はマクロライド系やセフェム系が選択されることもあります。
抗生物質の服用期間は通常10日間とされており、たとえ症状が数日で改善したとしても、処方された薬は最後まできちんと飲み切ることが重要です。途中で薬を止めると、症状が再発したり、合併症のリスクが高まったりします。
症状を和らげるための対症療法
抗生物質に加えて、発熱やのどの痛み、だるさといった症状をやわらげるための対症療法も行います。発熱がつらいときは、医師から解熱剤(アセトアミノフェンなど)が処方されることもあります。ただし、自己判断で市販薬を使うのは避け、必ず医師の指示に従ってください。
また、のどの痛みが強いときには、冷たい飲み物やゼリーなどの喉ごしの良いものを摂るようにしましょう。脱水を防ぐために、こまめな水分補給も忘れずに行うことが大切です。
家庭で気をつけたいポイント
溶連菌感染症は、咳やくしゃみ、または接触を通じて感染するため、家庭内での感染予防にも注意が必要です。以下のような対策を心がけましょう。
また、保育園・幼稚園などの集団生活をしている場合、通園の再開時期については後述の項目「5. 溶連菌感染症になったら幼稚園・保育園は通わせられる?」で詳しく解説しますが、医師の指示をしっかり確認したうえで判断するようにしましょう。
溶連菌感染症になったらどの病院に受診すればいい?
小児科の受診が基本
子どもが溶連菌感染症を疑われる症状(発熱、のどの痛み、発疹、倦怠感など)を示した場合、まず最初に受診すべき診療科は 「小児科」 です。小児科は、子どもの体調や病気に特化した医療を提供しており、年齢や発達段階に応じた診察や処置が可能です。
多くの小児科では、のどのぬぐい液による迅速検査(溶連菌抗原検査)を導入しており、数分で診断がつきます。これにより、ウイルス性の風邪との違いが明確になり、適切な抗生物質の処方が可能になります。
一般内科でも対応可能な場合もある
かかりつけの小児科が休診日であったり、夜間や休日などで受診が難しい場合、地域の一般内科や内科クリニックでも診察可能なケースがあります。特に、学童期(小学生以降)の子どもであれば、内科での対応も問題ないことが多いです。
ただし、乳幼児(0〜6歳程度)の場合は、やはり小児医療に慣れている医師がいる小児科または小児科対応のクリニックが望ましいでしょう。体重に応じた薬の処方や、合併症のリスク評価など、年齢特有の配慮が必要です。
発熱外来や感染症外来の活用
感染症の拡大防止の観点から、地域によっては「発熱外来」や「感染症外来」が設けられている場合もあります。発熱外来では、他の患者との接触を最小限に抑えた状態で診察が行われるため、安心して受診できます。
事前に電話やWebで予約・相談が必要なこともあるので、受診前に各医療機関のホームページや電話窓口で確認するとよいでしょう。
緊急の場合は夜間・休日の救急外来へ
溶連菌感染症そのものは、基本的に早期に適切な治療を受ければ重症化しにくい疾患ですが、まれに急な高熱、けいれん、呼吸困難、意識障害などがみられる場合は、夜間救急外来や休日診療所を利用してください。
特に以下のような症状がある場合は、迷わず救急を受診しましょう。
かかりつけ医の存在が心強い
日頃から信頼できるかかりつけ小児科医を見つけておくことは、いざというときに非常に安心です。過去の病歴や体質、予防接種歴などを把握してもらえている医師に診てもらうことで、より正確な診断と適切な治療が期待できます。
また、保育園や幼稚園への登園の可否に関する証明書が必要なケースでも、かかりつけ医であれば迅速に対応してもらえる場合が多いです。
溶連菌感染症になったら幼稚園・保育園は通わせられる?
原則として「登園停止期間」がある
溶連菌感染症は、学校保健安全法施行規則により、「第三種感染症」に分類されています。これは、インフルエンザや水ぼうそうのような強い感染力はないものの、一定期間は登園・登校停止が推奨される病気であることを意味します。
この法律に基づき、幼稚園や保育園では以下のような対応が取られています。
- 抗生物質の内服を開始してから24時間〜48時間経過しており、
- 全身状態(熱、咳、のどの痛み、ぐったり感など)が良好であること
この2つの条件を満たした場合には、登園可能と判断されることが多いです。
登園にあたって「治癒証明書」が必要なことも
園によっては、「治癒証明書」または「登園許可証」の提出を求められる場合があります。これは、他の園児や職員への感染拡大を防ぐために行われる安全対策の一環です。
証明書のフォーマットは園で用意している場合もありますが、小児科やかかりつけ医の診察後に発行してもらう必要があります。受診の際にその旨を医師に伝えましょう。
また、最近では「保護者記入による登園届」で対応可能な園も増えており、医師の証明が必須ではないケースもあります。そのため、事前に園の対応方針を確認しておくことが重要です。
他の園児への感染を防ぐためにも慎重に
溶連菌は飛沫感染や接触感染によって広がるため、特に集団生活の場では注意が必要です。たとえ熱が下がっても、まだのどに菌が残っていて咳やくしゃみによって周囲に感染させてしまう可能性があります。
以下のような症状があるうちは登園を控えるのが望ましいでしょう
- のどの痛みが強く、食事や会話が難しい
- 咳や鼻水が続いている
- 体力が回復しておらず、園生活に参加するのが難しい
登園のタイミングについては、医師の判断と家庭での子どもの様子、そして園の方針を総合的に考慮することが大切です。
感染拡大を防ぐために家庭でできること
家庭内でも二次感染を防ぐため、以下のような対策を心がけましょう
- 家族全員の手洗い・うがいの徹底
- タオルやコップの共有を避ける
- おもちゃやリモコンなどの接触頻度の高いものの消毒
- 症状が強い場合はマスクの着用
また、兄弟姉妹が同じ園や学校に通っている場合、保護者が園に事情を伝え、感染防止の観点から一定の配慮をお願いしておくと安心です。
まとめ
溶連菌感染症は、子どもが日常生活の中でかかりやすい感染症のひとつであり、特に3歳〜小学生低学年の間でよく見られる疾患です。主な原因菌であるA群β溶血性連鎖球菌は、のどや皮膚に感染し、発熱や咽頭痛、発疹などの症状を引き起こします。
初期症状を見逃さないことが大切
突然の高熱、のどの強い痛み、舌の変色(いちご舌)、さらには発疹など、インフルエンザや風邪と見分けがつきにくい症状が多いため、保護者の方が「いつもと違う」と感じたら、できるだけ早く医療機関を受診することが重要です。
早期に診断されれば、適切な抗生物質治療によって症状はすぐに改善する傾向にあり、合併症のリスクも下がります。
治癒期間と再発リスクの管理
治療を始めると熱やのどの痛みは1〜2日で改善するケースが多いですが、抗生物質は処方された期間を必ず飲み切ることが大切です。これにより、再発や他者への感染リスクを減らすだけでなく、リウマチ熱や腎炎といった重篤な合併症の予防にもつながります。
また、まれに一度治ってから数週間後に腎臓炎を発症するケースもありますので、発熱やむくみなどの異常を見逃さないこともポイントです。
自宅でのケアと登園の判断
家庭では、十分な休養、こまめな水分補給、栄養バランスの取れた食事が基本のケアとなります。発熱時には解熱剤を使用し、症状に応じた対処が必要です。
登園については、
- 抗生物質投与開始後24〜48時間が経過し、
- 全身状態が良好である
という条件を満たすことが一般的な目安ですが、園のルールや医師の判断によって対応は異なります。無理をせず、しっかりと体力を回復させてからの登園が望ましいでしょう。
保護者としてできること
保護者に求められるのは、早期の気付き、適切な受診、家庭での安静環境の確保、感染拡大防止の意識です。特に保育園や幼稚園などで集団生活をしている場合、子どもが感染源にもなり得るため、周囲への配慮も欠かせません。
また、繰り返しになりますが、抗生物質の中断や自己判断での服用中止は厳禁です。完治させることが再発や合併症の予防につながります。
おわりに
本記事では、「子供がかかりやすい溶連菌感染症」について、症状、治癒期間、家庭での処置方法、受診先の選び方、登園可否、そして予防の考え方まで、幅広く解説しました。
溶連菌感染症は、きちんと対応すれば比較的早く回復する病気ですが、油断や放置によって重篤な合併症を引き起こす恐れもあります。
お子さまの健康を守るために、日頃からの観察と正しい医療知識を持ち、必要に応じて専門家の力を借りながら対応していきましょう。特に初めての育児の場合、不安に思うことも多いかもしれませんが、「早期発見・早期治療・十分な休養」を意識すれば、安心して子どもと向き合うことができます。
これからも、子どもが健やかに成長していくためのサポートを行う一助となるよう、分かりやすく役立つ情報をお届けしてまいります。